マウスピース
マウスピースと聞いて何を連想なさるでしょうか? ボクシングの試合で休憩中にうがいするときに口から吐き出す白い物体。トランペットの口にあてがう部分もそう呼ばれているでしょうか。
私たちも、患者さんのために俗にマウスピースと呼ばれる(本当は別の呼び名があるのですが)ものを作ります。前にも書きました無呼吸症候群やいびきを防止するためのものから、やはり睡眠中の歯ぎしりから歯を守るためのもの、顎関節症といって顎の関節の運動障害にに対して、マウスピースのようなものを用いて治していきます。
一時期噛み合わせを挙げると、運動機能が向上するとのうわさからゴルファーや野球選手の間で噛み合わせを挙げるマウスピースが流行したことがありました。しかし最近の研究では効果がないことがわかってきました。ただ運動中に頻回に強くかみしめ、顎の関節周囲や頭、首筋の痛みが出てくるような場合には、これを改善する効果はあります。そして痛みが和らぐことによって間接的に運動能力が上がることは考えられます。
運動にもいろいろな種類があり、歩くスピードよりゆっくりとした筋肉運動では、噛み合わせを挙げるマウスピースを入れると明らかに能力が上がることが判ってきています。 たとえば、ラグビーのスクラム、体操の吊り輪の十字懸垂や腕相撲などの運動です。
その他でもマウスピースをつけた方がよいスポーツがあります。それは、歯や顎に強い力が加わる可能性があるスポーツです。「前歯が折れていないアイスホッケー選手は一流ではない。」ということをむかし聞いたことがありますが、今はこのような時代ではないでしょう。怪我をせずにスポーツを楽しみ、スポーツ技術を磨ければ、一番よいに決まっています。
歯や顎の骨を守るにはかなり厚手の材料でマウスピースを作りますが、それによって呼吸を妨げても困りますので、微妙な調整をしていきます。 最後に管楽器を演奏なさる方にも、よい音を目指すためにマウスピースを作ることがあります。歯が何本かなければもちろんですが、歯並びが悪いだけでも、口から楽器に送られる空気は、奏者の意志に反したものになります。また、前歯の治療後に音質が変わってしまったということも耳にします。このような場合歯並びをスムースにするようなマウスピースを入れることで、見違えるような音色になります。