地図状舌
国宝の玉虫厨子はその発想と根気のいる仕事振りに感動させられます。しかしそのきれいな羽の玉虫も光のあたり具合で色がいろいろ変化することから、曖昧なことの代名詞に使われてしまっています。
舌の病気で日々、あるいは時間によっても変化するものに地図状舌があります。舌の表面に白色の帯状の縁取りがある中に、舌乳頭という舌本来のざらつきがなくなり、淡く赤みを帯びて、やや艶のある表面になります。最初は小さかったものが大きくなって、隣の病変と癒着したと思えば、突然正常に戻り、反対側に新たに現れたりと、その変化は玉虫の羽の比ではありません。顕微鏡で病変を見ると、上皮がはがれていたり、爛れていたりして、表面化には炎症時に出現する細胞も多く出現します。しかし、自覚症状はないことの法が多いようです。自覚症状が無い場合には、悪性の病変ではありませんので治療の対象にはなりません。原因は遺伝や素因があると言われていますが、はっきり分かっていません。もともと原因が分からない病気に対して、患者さんに理解を求めるために遺伝や素因が関係しているということが多いように私は思います。人の遺伝子研究が飛躍的に進歩しているので、この病気の解明も遠い先ではないかもしれません。しかし、生死に関係なく、著しい症状も示さない病気ですのでその原因解明は後回しにされるかもしれません。なんとも玉虫色の物言いで申し訳ありません。